BMW i3のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)ボディの覚書

2015.01.19 Monday

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    BMW i3のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)ボディの覚書PHOTO by M 93: „Dein Nordrhein-Westfalen“(cc)
    モータファン別冊『BMW i3 のすべて』からのピックアップです。

    BMW i3 のボディのうち、CFRP が使われているのは『ライフ・モジュール』と称するボディシェル部分。

    BMW i3 の CFRP パーツ『ライフ・モジュール』ができるまで
    BMW i3 のボディの元となる PAN 繊維は、三菱レーヨンの広島工場で作られている。

    それを北米ワシントン州モーゼスレイクにある SGL オートモーティブカーボンファイバー(ACF)社に運び、太さΦ7ミクロン(髪の毛の約 1/7)の炭素繊維に加工している。
    さらに、それを約 5万本撚り合わせ『ロービング』を作っている。

    BMW i production - CFK production SGL Automotive Carbon Fibers, Plant Wackersdorf(Total 2:51)SGL社全景・BMW i3 製造ダイジェスト



    ドイツ、バイエルン州ヴァッカースドルフにある ACF社の工場で布に織り上げられ、積層・裁断されて『スタック』という状態に加工される。

    スタックとはそれぞれのパーツに合わせた大きさに裁断され、金型プレスされて予備成形が行われること。
    モジュールのパートごと(例えばサイドパネルなら 9つのパートからなる)に CF 生地を最大 12層、型に合わせて設置し、自動加熱式ツールによってラミネートパックしておく。
    これは、『プリフォーム』とよばれる予備成形のプロセスで、パートごとに CF 生地を仮止めする工程。

    これが板金ボディのプレス工程に相当するが、布状の加工なので板金加工のような数百t クラスのプレス機は不要。
    製造エネルギーやコストが削減できる。

    BMW のランツフート及びライプツィヒ工場へ運ばれ、RTM 成形で CFRP 製品へと加工される。
    RTM 成形はオートクレーブ成形より強度面ではやや劣るものの、成形時間が大幅に短縮できるのが良い点。

    予備成形されたパーツは不要な部分が切り取られ『ブランク』という状態に加工される。
    それを本成形する金型に並べ、加圧しながら樹脂を注入。

    例えばサイドセクションは、11個のパーツを一つの金型に並べて一体成型される。

    BMW は、この樹脂の注入における時間・圧力・温度の管理に独自のノウハウがあり、十分単位での成形を可能としたという。

    CFRP となった各コンポーネントは切削加工工程に送られる。
    ここではウォータージェットカッターで不要な外周部分が切り取られるほか、ボルトやハーネス、配管類を通す穴が加工されていく。

    カーボン繊維はスタック状態では曲げ方向に柔軟だから、金属では対応できない深絞りや曲げ形状も可能。
    後づけの補強パーツが不要になるため、この段階で構成パーツは、金属使用時の約 1/3、約 150個に収まっている。
    これも重量やコストの削減に寄与している。

    BMW i production - RTM press(Total 1:19)ウォータージェット加工



    コンポーネントごとに完成したパネルアッセンブリーは一箇所に集められ接着される。
    大型部品の接着は完全自動化され、構造用接着剤が塗布された後、ボディシェルの形に組み合わされ、接着部を加圧&加熱することで接着剤を硬化させる。

    接着剤は連続的に塗布されるのでシーラーの類は不要。
    連続接着で面積も広いので、ボディ全体の剛性を高める効果も大きい。

    これまでの手法では一日単位の時間を硬化に要したが、新しい接着剤の採用と、完全自動作業、接着空間と分量のコントロール、さらに追加の特定箇所用熱処理プロセスといった工夫で、従来の1/32 程度、時間にして 10分を切る接着硬化時間を実現。

    ボディシェル完成。
    スチールボディの場合、次に塗料プールにドブ漬けする防錆塗装が行われるのだが、錆びない CFRP には不要。
    設備もコストもかからないばかりか、塗料の重量約 10Kg(フェンダーなど外板の防錆塗料省略分も含む)が削減できる。

    ・ワイパーモーターなどの艤装品の一部や、内装が部分的に取り付けられ、外板で唯一の CFRP製部品であるルーフパネルが加圧接着されて『ライフ・モジュール』が完成。

    アルミ製シャシー『ドライブ・モジュール』と CFRP製『ライフ・モジュール』の固定は、接着剤とボルト 4本でされる。
    各モジュールの剛性が相乗的に作用するため、全体剛性は極めて高い。

    リサイクルについて
    BMW i3 の製造過程で発生した樹脂加工前の CF は再び生産工程に投入される。
    BMW i3 に使われている炭素繊維の約 10%がリサイクルによるもの。

    樹脂加工後の不要物は CF を分離して、例えばリヤシートシェルといった軽量化重視の部位、および他産業分野の製品用に転用される。


    → カーボンコンポジット業務に戻る

    BMW i3 Production - Part 1(Total 22:53)カーボン繊維の製造


    BMW i3 Production - Part 2(Total 18:22)モーターの組立・内装の製造などの様子


    BMW i3 Production - Part 3(Total 17:10)全自動で接着剤が塗布される様子


    BMW i3 Production - Part 4(Total 16:31)BMW i3 組立工程
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